白浜は美しい 海の透明度と下水   久保卓哉
       紀伊民報  2004年7月13日


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 白浜は美しい。帰るたびそう思います。白良浜、円月島、千畳敷。海の景色は特に美しい。私は海に潜ることが好き、しかし臆病だから潜るのはせいぜい2m。青い魚や小さな貝をながめるだけなのですが、ここ数年、岩につく海草が減って、やたらと粉っぽい沈殿物が増えました。魚と貝がいないのです。
 汚染された排水のせいかなと漠然と思い、漁船を借りて綱不知から湯崎まで回ってみました。白良浜の先の権現崎から出ている排水は透明無臭で、白浜町が金をかけただけはあるな、と思いましたが、江津良の生活排水はひどかった。朝の洗濯どきや夕方の料理どきは、洗剤の泡が垂れ流し。崎の湯手前の漁港に導かれた旅館の温泉排水はひどかった。汚れた温水があたりを濁らせていました。
 海が美しいと魚も貝も集まりますが、人もたくさん集まります。白浜がさびれた気がするのは、私だけではないと思いますが、その原因は不景気や移動形態の変化といった時代の流れではなく、案外、海の汚れと関係があるのではないでしょうか。魚や貝が逃げ出す海には、人がやってこないからです。
 ではどうすればいいでしょう。人を集めるためには、下水道の完全普及が不可欠だと思います。シャンプーやリンスが含まれた温泉排水はすべて下水道に、家庭から出る生活排水はすべて下水道に。そうすれば白浜の海に粉っぽい沈殿物がなくなって海草が増え、魚と貝が集まってきます。すると人も集まってくると思います。この7月9日と10日に白浜の海に潜ってそんな事を考えていました。