戦争体験者の「本音」にも視線を  久保勁甚
              毎日新聞 2007年8月2日
 


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久間章生前防衛相の原爆をめぐる発言を聞いて、先の大戦で空襲を体験した父の言葉について改めて考えた。
私は戦争の深刻さを心に刻んでおきたいと、積極的に父に話を聞いている。父は「隣のおばさんの体に爆弾の破片が突き刺さって、はりつけのようになって死んでいた」などと話し、
「広島や長崎の人には申し訳ないが、原爆の投下で戦争が終わって正直ほっとした」と語っていた。
これが、父や戦争を実際に体験した人たちの「一刻も早く戦争が終わってほしかった」という「本音」ではないだろうか。ついさっきまで言葉を交わしていた親友や大切な家族の命が、いとも
たやすく奪われる。今の日本では目の当たりにすることのない殺りく、惨状が日常の中に当たり前のように存在する。私には想像もつかないような現実が過去には実際あったのだ。
久間氏の発言は許されない。父も私も戦争や原爆に絶対反対だ。
だからこそ、戦争の悲惨さを訴える体験者の「本音」に目を向けるべきだと考える。